有料老人ホームが急増、建築計画上の注意点は?

いろいろな高齢者施設があちらこちらで建設されています。

「サービス付き高齢者住宅」とか「有料老人ホーム」と表記されていますが、その違いは何なのか、建築計画のなかで注意すべきことは何なのかについて考察してみました。

(わたしの活動範囲である富山県富山市の場合で検討します。)

有料老人ホームとは?サービス付き高齢者向け住宅との関係は?

【有料老人ホームの定義】

老人福祉法第29条第1項において、

①老人を入居させ(以下、「入居サービス」という)、

②当該老人に対して「入浴、排泄または食事の介護」、「食事の提供」、「洗濯、掃除等の家事」又は「健康管理」の少なくとも一つのサービス(以下「介護等サービス」という。)を供与する

施設として定義されています。

同項の規定に基づく「届出」の有無にかかわらず、入居サービス及び介護等サービスの実施が認められるものは、すべて有料老人ホームに該当するものとして取り扱われます。

従って、「サービス付き高齢者向け住宅の登録を受けている有料老人ホーム」というものが存在します。

参考までに、厚労省から各地方自治体向けに出されている通達(助言)を下に掲げておきます。

有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

有料老人ホームにおいては、介護保険における「特定施設入居者生活介護(地域密着型特定施設入居者生活介護、介護予防特定施設入居者生活介護を含む)」の給付を受けることができる「指定特定施設」として、自ら介護を提供する役割を有している施設がある一方で、訪問介護や通所介護などの外部の居宅サービス等との連携を強化している施設も増えているなど、その内容は多様化している。

一方で、従来「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(以下「標準指導指針」という。)の対象から除外しているサービス付き高齢者向け住宅について、その位置づけの明確化が求められていること、有料老人ホームの届出規定が適切に遵守されていない事例が増加していること、入居者が自由に居宅サービス等を選ぶことを阻害していると疑われる事例が見られることなど、有料老人ホームの運営に対する課題が生じている実態もある。

このため、今般、別添のとおり標準指導指針を改正することとしたので、つぎの事項に留意の上、貴管内の有料老人ホームに対して適切な指導を行われたい。なお、サービス付き高齢者向け住宅においては、有料老人ホームに該当するものが多いという実態もあるため、貴職においては、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅についても的確に把握の上、必要に応じて、適切な指導を行われたい。

ということで、「入居サービス」付き高齢者向け住宅が、「介護等サービス」を行う場合は、有料老人ホームに該当するということになりますね。

以下それぞれについて、建築計画的に必要な事項を確認しておきます。

有料老人ホーム

有料老人ホームを設置する場合は、老人福祉法第29条第1項の規定により、あらかじめ自治体へ設置届を提出することが義務付けられています。

新築の場合で、開発許可や確認申請が必要な場合には、その手続きのまえに事前協議を行い、その許認可が降りた段階での設置届出となります。

富山市では、国が定める「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」に基づき、「富山市有料老人ホーム設置運営指導指針」を定め、その施設の構造・運営方法を指導していますが、あくまで「指導」であり、拘束力のないものと受け取れます。ただし、建築基準法・消防法に関しては厳しい規制がかかりますので要注意です。

指針の中に書かれている建物の構造を書いておきます。

・建物は、建築基準法に規定する耐火建築物または準耐火建築物とすること。

・一般居室は個室とし、入居者1人当たりの床面積は13㎡以上とすること。

・各個室の界壁は、小屋裏又は天井裏に達するものとするほか、遮音性能を有するものとすること。

・居室の設備・面積に応じて廊下巾の規定があります。中廊下の場合、1.8m又は2.7m以上。

(あくまで指導指針なので、建築基準法・消防法とのすり合わせが必要です。)

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅とは、「高齢者住まい法」の改正により創設された介護・医療と連携し、高齢者の安心を支えるサービスを提供するバリアフリー構造の住宅です。

建築面での基準として、居室には台所、水洗便所、収納設備、洗面設備、浴室などが設置され、一戸当たりの床面積は、原則25㎡以上ですが、十分な面積の共同生活質がある場合には、18㎡以上とされています。また施設全体が床の段差のない、廊下巾が78cm以上あるなど、バリヤフリー構造が義務化されています。

「サービス付き高齢者向け住宅」として登録することで、補助・税制・融資の優遇措置をうけることが出来ます。

以下、サ高住とよびます。

サ高住の制度は、「高齢者住まい法」により、2011年10月から制度がスタート。それまであった、「高齢者円滑入居賃貸住宅」「高齢者専用賃貸住宅」「高齢者向け有料賃貸住宅」はすべて、サ高住に一本化されました。

「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設では、介護職員による食事・掃除・洗濯のサポート、介護職員や看護師による入浴・食事・排泄などの介護、機能訓練指導員によるリハビリテーションなど、介護付き有料老人ホームとほぼ同様のサービスを行っています。

上に掲げた国からの通達によれば、サ高住の登録を受け、介護サービスを提供しているにもかかわらず、有料老人ホームの届出をしていない施設が多くあるようですね。

まとめ

平成28年までは、サ高住の建設資金に対して国の補助金制度がありましたが、H29年度分は未定です(H29年4月現在)。

サ高住、住宅型老人ホームとも、介護に関しては外部のサービスの利用を基本としますが、介護型有料老人ホームと同等のサービスを提供する施設も増えているようです。

ソフト的な面である運営方法や契約形式も様々で、計画をまとめるには検討すべきことがたくさんありますね。