熊本地震から1年が経ちました(2017年4月現在)。
耐震等級2の建物が崩壊したことにより、現行の新耐震基準についても疑問が投げかけられました。
耐震等級については、「等級3が必須」、「基準法の新耐震基準をしっかり施工していれば大丈夫」と意見が分かれています。
このような状況のなか最近、耐震等級2「相当」とか等級3「相当」という言葉を耳にします。
「相当」とは、どういう意味で使われているのでしょうか?
耐震性能向上のための法改正
大きな地震があるたびに建築基準法は改正されてきました。近年の法改正のあらましです。
【1981年「新耐震設計法」施行】
1964年新潟地震、1968年十勝沖地震、1978年宮城沖地震を経て、「新耐震設計法」が基準法に取り入れられました。軟弱地盤による基礎の強化、必要壁量の強化(変形角の制限)、風圧力に対する見付面積算定法の変更が加えられました。
現在、これ以降に建てられた建物については、耐震基準が満たされており、これ以前のものに対しては、「耐震改修」が必要な建物とみなされています。
【2000年建築基準法改正】
1995年の兵庫県南部地震で被害の大きかった古い木造住宅が、耐力壁配置のバランスが悪かったこと・柱や筋かい端部の接合部に問題が多かったことから、これらを解決する方法が取り入れられました。耐力壁の配置バランスをチェックする「4分割法」、柱の引き抜きに対応するための「N値計算法」がそれです。
さらに、この年には住宅性能表示制度により、「耐震等級」が定められるようになりました。
基準法と耐震等級1
一般に、耐震等級1は、基準法と同等の耐震性能と考えられていますが、床面積の捉えかた等に若干の相違があるため、耐震等級1の方が基準法レベルに比べて10~20%程度高い性能になるといわれています。
耐震等級2・3の特徴
地震に対しての耐力という面から、等級1の1.25倍の地震に耐えられるのが等級2、1.5倍に耐えられるのが等級3といわれています。
耐震等級2・3の場合、床面積・屋根の重さ・多雪地域の別・地震地域係数を考慮して地震力に対する必要壁量を算出することになるので、地域の実態に即した壁量になるといえます。
この必要とされる耐力壁の計算に際し、積雪荷重を見込むというのがとても重要な部分です。基準法の考え方では、多雪地域だとしても積雪荷重を見込んでいないのです。つまり、屋根に雪が積もった状態で地震が来た場合を想定していないことになります。
これ以外の特色は、水平構面という考え方を導入し、床や屋根面が耐力壁と一体になって地震力に耐えるという考え方をします。
具体的には、耐力壁と同様に、存在床倍率が必要床倍率を上回ることを確認します。
直下率という考え方
直下率とは、上下階の柱や耐力壁の位置がそろっている割合のことで、上階の荷重を下階へスムーズに伝えるための目安となり、柱で50%、耐力壁で60%以上は確保したいところです。
直下率が低いから即弱いとはなりませんが、先の熊本地震では直下率の低いものに被害が大きかったという報告もあります。
4号特例という逃げ道
4号特例という言葉を耳にしたことはありますか。現在の基準法では、木造2階建てのような小規模な建築物(4号建築物といいます)は、建築確認申請時に構造計算書を提出しなくてよいことになっています。つまり、建築士である設計者によって計算が行われていることを前提に、検査機関では再度チェックをしないということです。設計者にお任せということです。
熊本地震での被害に関しては、いろいろな方面で報告されていますが、耐力壁の配置・筋かいの向き・水平構面の構造・接合部の施工方法等に関して不適切なものが多数あったそうです。住宅の構造にたいして、甘い認識があったのではないかとおもってしまいます。
まとめ
「相当」という言葉については、耐力壁の量が基準法の1.25倍とか1.5倍設置してあるということなのか、床倍率も含めて性能表示の基準を満たしているが、性能表示制度の評価を取得していないだけということなのかは分かりません。ただ、かなりあいまいな表現がされているようなのでエンドユーザーとしては、十分確認をしたいところです。
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