経済産業省資源エネルギー庁から平成29年度の「ZEH支援事業」の概要が発表されました。(平成29年3月13日)
正式な内容は4月以降になるそうですが、少々気になる点がありますので報告いたします。
平成29年度のZEHのの目玉は「価格低減推進」だって?
まずはホームページの引用から、
[ZEHの価格低減推進]・2020年からの自立普及を目指し、ZEHの価格低減を推進するため、ZEHのための外皮・設備の販売価格(平米当たりの単価)が一定以下であるZEHを補助対象とします。
・ZEHビルダーの皆様におかれましては、住宅の多様性を保ちつつ、設備等が過剰スペックとならないように留意して、自立化に繋がるようなZEHの普及を目指すようお願いします。
・具体的には、「計上対象とする補助対象経費」が執行団体の設定する「ZEH補助対象費用上限単価(万円/㎡)を下回ることを条件とします。上限単価については、以下のとおり地域別・住宅仕様ごとに設定します。
※引用文の中の補助事業執行団体は、まだ未定です。H28年度は「環境共創イニシアチブ(SII)」という社団法人が業務を行っていました。
赤い文字のところが、H29年度ZEHの目玉になりますね。
つまり、今回からは国がZEHにかけることのできる費用を指定し、それを実現できない業者(ひいては施主)には補助金を支給しませんよということですね。
一見、エンドユーザーにとって喜ばしい政策に思えます。
果たしてそうなるのでしょうか?
たしかに、ここに書かれていることは、「ZEHに係る部分の費用」と読めますので、ZEHの建築費が下がるのかなと期待してしまいます。
ただ、H28からH29に年度が変わっただけで、材料や設備の金額が下がるとは思えません。下請け業者に対する価格決定力の強い大手ならまだしも、中小のビルダーや工務店では急なコストダウンは難しいのではないでしょうか。
結果、申請上はZEHにかかる部分のコストは下げて見せますが、実際は他の見積項目に上乗せして調整するのは明らかです。
⇒関連記事:「ZEHはいいや!」という選択肢もあっていいんじゃないかという結論に至りました!
ZEHはもはや大手メーカーの独断場?
H28年度のZEH補助金は、大手メーカー10社でその75%を占めるそうです(あくまで補正二次公募までの途中経過)。
外皮性能についても、UA値0.6の基準値に対し、大手は0.48をはじき出しています。
大手の機動力・組織力もありますよね。そして、今回のような価格低減目標が掲げられれば、ますます大手メーカー有利の市場になるのは間違いありません。
ムチのつぎはアメ
機動力に乏しい中小企業に対してのアメ政策も用意されています。
ホームページからの引用です。
[申請の柔軟化](一部省略)次のとおり補助金申請の柔軟化を行います。
・補助金申請において、外皮計算書、エネルギー計算書の提出を不要とします。ただし、従来の実施計画書に相当する書式の提出は引き続き必要です。
・交付決定を受けた補助事業者は、実績報告書の提出時までにBELSを取得して執行団体に提出してください。
(以下省略)
H28年度後半は、公募数に対して申請数が全く追いついていませんでした。
あくまで僕の想像ですが、理由は2つ。
①公募決定から申請の受付までの期間が短く、業者の申請書作成が間に合わなかった。
②そもそもZEHにかかるコストが高く、ユーザーが希望しなかった。大手はそのネームバリューから高級志向の客が対象なので障害にならなかった。
①への対策が今回のアメ政策なのでしょうが、効果のほどはいかに?という感じですね。
またBELSを取得するように書かれていますが、求められる基準値が示されていません。
スケジュール
公募のスケジュールが出ていましたので、貼り付けておきます。
当面は四次公募までの計画です。
まとめ
2020年までに省エネ住宅の義務化が目標になっています。
実現のためには建築工事のコストダウンは必須なのは分かりますが、このような政策運営で良いのでしょうか。
⇒関連記事:資源エネルギー庁のホームページ