住宅に使われる断熱材。いろんな種類があって、しかもメーカーや工務店ごとに勧めるものが違っていて、説明を聞けば聞くほど分からなくなってきます。
いったい何がいいのでしょうか?
断熱材の厚み
平成29年現在、省エネ基準の最新版は「平成28年基準」です。
地域区分が細分化されたことと、一次消費エネルギーという観点が加えられた点を除けば、躯体の性能的には「平成11年基準」と同じです。
使われる局面によって意味合いは少々変わりますが、一般的に「次世代省エネ基準」というときは、平成11年基準のことをいうと解釈してよいでしょう。
これに対して、「新省エネ基準」というものがありますが、これは昭和55年に初めて導入された「省エネ基準」を強化するものです。
平成4年に定められたもので、現在の「次世代省エネ基準」とは比べ物にならないくらいの低性能ですので、ご注意下さい。
ただし、「住宅性能表示制度」の中では、「次世代省エネ基準」が等級4、「新省エネ基準」が等級3となっていて、等級3でも良いような印象を受けますが、僕の考えとしては、等級3は全くの別物です。
⇒関連記事:省エネ等級4は必須!
断熱材の種類について説明するために、次世代省エネ基準(H11年)でのⅣ地域・充填断熱工法の場合の断熱材ごとの必要厚さを示した表を見てみることにします。
部位 | 必要な熱抵抗値 | 断熱材の種類と厚み(mm) | ||||||
A-1 | A-2 | B | C | D | E | |||
屋根又は 天井 | 屋根 | 4.6 | 240 | 230 | 210 | 185 | 160 | 130 |
天井 | 4.0 | 210 | 200 | 180 | 160 | 140 | 115 | |
壁 | 2.2 | 115 | 110 | 100 | 90 | 75 | 65 | |
床 | 外気に接する部分 | 3.3 | 175 | 165 | 150 | 135 | 115 | 95 |
その他の部分 | 2.2 | 115 | 110 | 100 | 90 | 75 | 65 | |
土間床等の外周部 | 外気に接する部分 | 1.7 | 90 | 85 | 80 | 70 | 60 | 50 |
その他の部分 | 0.5 | 30 | 25 | 25 | 20 | 20 | 15 |
板状
表で、A-1~Eとなっている部分は、断熱材の種類を示していて各々に最低の厚さ(緑色の部分)が記入されています。
断熱材の種類
上の表に対応する断熱材が下記。
記号 | 断熱材の種類 |
A-1 | 吹込み用グラスウールGW-1、GW-2(施工密度13K、18K) |
シージングボード(9mm) | |
A級インシュレーションボード(9mm) | |
タタミボード(15mm) | |
A-2 | 住宅用グラスウール10K相当 |
吸込み用グラスウール25K | |
B | 住宅用グラスウール16K相当、20K相当 |
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板4号 | |
A種ポリスチレンフォーム保温板1種1号・2号 | |
C | 住宅用グラスウール24K相当、32K相当 |
高性能グラスウール16K相当、24K相当、32K相当 | |
吸込み用グラスウール30K相当、35K相当 | |
住宅用ロックウール(マット・フェルト・ボード) | |
A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板1号、2号、3号 | |
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板1種 | |
A種ポリエチレフォーム保温板2種 | |
吹込み用セルロースファイバー25K、45K、55K | |
A種フェノールフォーム保温板2種1号、3種1号 | |
建築断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種3 | |
吸込み用ロックウール65K相当 | |
A種フェノールフォーム保温板3種2号 | |
D | A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温板特号 |
A種押出法ポリスチレンフォーム保温板2種 | |
A種フェノールフォーム保温板2種2号 | |
A種硬質ウレタンフォーム保温板1種 | |
A種ポリエチレンフォーム保温板2種 | |
建築断熱用吹付け硬質ウレタンフォームA種1、A種2 | |
高性能グラスウール40K相当、48K相当 | |
E | A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種 |
A種硬質ウレタンフォーム保温板2種1号・2号・3号・4号 | |
A種フェノールフォーム保温板2種3号 | |
F | A種フェノールフォーム保温板1種1号・2号 |
断熱材が流通し始めた初期は、グラスウール・ロックウール・押出法ポリスチレンフォームが主でしたが、外断熱工法のブームでビーズ法ポリスチレンフォーム・硬質ウレタンフォーム・フェノールフォームなどの板状の発泡プラスチック系断熱材が市場に出回るようになりました。
また、人体や環境への負荷を軽減する考え方から、セルロースファイバー・ウール・木繊維断熱材などの自然系断熱材も普及しています。
⇒関連記事:断熱工法の歴史について調べてみました!
断熱材選定の基準
断熱材は、それぞれに特性があります。選定基準となる性質をあげます。
断熱性能(熱伝導率)
断熱性能は、熱伝導率λであらわします。単位は、W/m・K。単位面積あたり、1mの厚さのものが1時間に伝導する熱量であらわします。
上の表では、AからEにいくに従って断熱性能が優れています。
防火性
素材として防火認定されていのは、グラスウールとロックウールで、とくにロックウールは耐火性能に優れています。
発泡系のものは、火災時に燃えやすく有毒ガスを出すものもありますので、注意が必要です。
防蟻性
近年、基礎断熱工法が普及により基礎周りに断熱材が使用されるようになりました。
発泡ポリエチレンフォームは、好蟻性があるので使用する場合は、防蟻処理を施したものを使用する必要があります。
グラスウールを加工したものは、防蟻性能がありますので安心です。
健康性
自然系のものが優れていますが、コスト的には割高感があります。
それでも、セルロースファイバーはそれほどでもなく検討の余地ありです。
施工性
基本的には、どの断熱材にしても各々の性能確保の為には、正しい方法で施工されなければいけません。
現場吹付け硬質ウレタンに関しては、それほど現場での精度が要求されない面はあります。
価格
断熱材のコストは、建物全体でかなりの部分を占めます。
様々な断熱工法がある中で、費用対効果を十分検討して、他の建材・設備グレードの採否とも比較しながら決める必要があります。
おもな断熱材ごとの性質
グラスウール
最も多く使われています。形状としては、マット・ボード・バラ綿があります。
透湿性があるので、充填断熱として使用する場合は防湿層が必要。防湿フィルムのついた袋入りのものがあります。
ロックウール
基本性能はグウラスウールとほぼ同様。耐火、吸音性に優れています。
ビーズ法ポリスチレンフォーム
形状はボード状。一般には「発泡スチロール」として梱包材とかに使われます。
EPS(Expanded Poly-Styrene)とも呼ばれます。原料ビースを予備発泡させた後に、金型に充填し加熱することによって約30倍から80倍に発泡させてつくられます。
建築に用いられるものは難燃処理され、自己消化性があります。
押出し法ポリスチレンフォーム
形状はボード状。硬質で耐圧力性があり、外張り断熱や基礎断熱によく使用されます。基礎断熱に使用する場合は、防蟻処理が必要です。
価格は、50mm厚のもので、100mm厚の高性能グラスウール16Kの約2倍。
硬質ウレタンフォーム
ボード形状と現場発泡の2種類があります。断熱性能が高いがコストも高い。
□現場発泡ウレタンにはA種、B種の2種類があり、さらに細分化されています
A種:ノンフロンタイプでさらにA種1、A種2、A種3の3種類があります。木造住宅では、A種3が多い。
B種:次世代フロン含有。B種1が建築用で非木造で使用されるのが一般的。
フェノールフォーム
ボード状のほか、金属板や石膏ボードなどの複合パネルがあります。断熱性に加え、防火性能にも優れています。
ボード形状の中では最高値。
セルロースファイバー
自然系のもので最も普及が進んでいる断熱材。
原料は、パルプ、新聞古紙等で、ホウ酸を使用することで難燃性と防虫効果を持たせています。
形状は綿状で、吹込み・吹付けによって施工されます。
同性能で比較すると、材工共で高性能グラスウールの約2倍。
木質繊維断熱材
林地残材や間伐材を原料とする、木繊維の断熱材。
メーカーのHPを見ると、ドイツで開発された100%自然素材の断熱材で、高性能グラスウールと同等の断熱性能を有しているそうです。
ボード形状、綿形状双方あり。
まとめ
あくまで個人的な考えですが、僕はグラスウールやロックウールをお勧めします。
理由は、コストパフォーマンスと防火性。
あとコストは高いが、天井断熱に関しては施工精度への信頼性からセルローズファイバーの吹込みがおすすめです。
どの断熱材を選択するにしても、正しく確実に施工されることが必要です。
施工精度への疑問を理由に、グラスウールを否定するひとがいますが、施工精度に関してはどの材料を使おうとおなじことですよね。
そこでは、施工者とは別の視点でチェックする第三者(設計監理者)が必要なんですけどねー。