このところたてつづけに起こる地震、そのたびに建物の耐震性能が話題になります。
熊本地震では、耐震等級2の住宅が倒壊したことが大きな衝撃となり、最低基準である建築基準法を見直す必要性が取り立たされています。
性能表示制度でいうところの、「1.構造の安定」の項目の部分
耐震、耐風、耐雪について検討することになりますが、
このなかのひとつ、「耐震等級」の設定については、「倒壊防止」と「損傷防止」というふたつの観点から評価します。
・倒壊防止
→数百年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では遭遇する可能性は低い)大きさの力に対しては、損傷は受けても、人命が損なわれるような壊れ方をしないこと。
想定する地震の揺れの強さは、震度6強から7程度に相当し、関東大震災、阪神淡路大震災の揺れに相当します。
・損壊防止
→数十年に一回は起こりうる(すなわち、一般的な耐用年数の住宅では一度は遭遇する可能性が高い)大きさの力に対しては、大規模な工事が伴う修復を要するほどの著しい損傷が生じないこと。
(「免震」については、別項でとりあげます)
構造躯体の倒壊防止
・地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさを表示
・等級1から3まであり、等級2は等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊しない程度を示しており、等級3では1.5倍の力に耐えることが出来ます。
・極めて稀に(数百年に一回程度)発生する地震力に耐えられるものが、「等級1」(建築基準法上は耐えられることになっている)
構造躯体の損傷防止
・地震に対する構造躯体の損傷のしにくさを表示
・等級1から3まであり、等級2は等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して損傷を生じない程度を示しており、等級3では1.5倍の力に対して損傷を生じない程度のものになります。
・稀に(数十年に一回程度)発生する地震力に耐えられるものが、「等級1」(建築基準法上は耐えられることになっている)
等級1と等級2・3では、考え方が大きく異なります
地震力というのは基本的には水平力です。地震が起こると建物に横方向の力がかかります。
ゴジラが建物を横から押すイメージです。
この力に対して建物がどこまで踏ん張れるかが耐震性能になります。
木造住宅では、横方向の力に対しては、基本的に「壁の強さ」で対抗します。「強い壁」の量が地震力を上まわっていれば建物は倒壊しないという考え方です。
等級1の建物が、これです。壁の量を計算して基準を満たしていればOKです。(最低基準を定めた建築基準法は、これでOKとしています)
等級2・3の建物では、「壁だけではなく、床や屋根にも水平力を負担してもらいましょうよ」という考え方を取り入れています。
ダンボールの箱を、ふたを閉めないときと、ふたを閉めてガムテープで固定したときとで、その強さの違いは明らかですよね。
注意して欲しいのは、等級1の壁の量を1.25倍とか1.5倍にすれば、等級2とか3相当の強さになるのではないか安易に考えがちですが、上で説明したとおり、床や屋根が耐力(水平構面剛性といいます)を持つか持たないかという点で、等級1と等級2・3は全く別物だということです。
まとめ
2016年4月の熊本地震では、等級2の建物が倒壊しました。約28時間のうちに、震度6を超える揺れが3回も起こったことが原因のひとつといわれています。
数百年に一回起こるであろう大きな地震が、ここ10年くらいのあいだにいくつか起こってしまいました。
これだけ地震による建物の被害が報告されている状況で、まだ等級1(建築基準法の最低基準)の建物で大丈夫ですか?